「技術・人文知識・国際業務」ビザは就労ビザの中の一つです。

専門知識を生かしたホワイトカラーの職種が当てはまります。

具体的には、営業やマーケティング、経理や貿易などの文系の事務職と、通訳や翻訳、デザイナー、 SE などのコンピューター関連の仕事や電気や機械系のエンジニア等の理科系の仕事が当てはまります。

就労ビザの申請は、申請内容を証明するために、たくさんの資料を添付しなければならず、外国人が個人で申請できるものではなく、企業と契約を結んだ上で、企業が主導して入国管理局に申請します。

つまり企業から内定が出て、さらに雇用契約を結んだ後に申請書を作成することになります。

大企業の場合は希望や実績を証明することはさほど困難ではなく、証明する資料を提出すれば、比較的審査が通りやすい側面もあります。

しかし中小企業・零細企業にとっては、雇用する会社側の提出書類は多いので、会社に関するかなりの量の説明書類を作成し、入国管理局に提出することは容易ではありません。

この傾向は、事業規模が小さければ小さいほど、就労ビザ取得の難易度は高くなります。

ここで、本邦の公私の機関との「契約」とは、雇用契約の他、委任や委託、嘱託等の契約も含まれます。ただし、在留活動が継続して行われることが必要なので、これらの契約は、特定の機関(複数でも構いません)との継続的なものでなければなりません。

以下、技術・人文知識・国際業務ビザが認められるためのポイントを説明します。

要件1.会社と外国人との間に契約があること

技術人文知識国際業務の条件として会社と外国人との間で契約が交わされてることが求められます。

この契約とは一般に、雇用契約書のことです。雇用契約書を入国管理局へ提出することにより許可が下ります。

内定の段階では、申請を出しても許可がおりません。

雇用契約以外の派遣契約や請負契約でも就労ビザは取ることができますが、派遣先の企業にスポンサーになってもらい、安定的かつ継続的に契約が更新されることが求められるので、派遣や請負契約での就労ピザの取得は、難易度は高くなります。

要件2:仕事内容と大学での専攻との関連性

仕事の内容は専門性のある職務内容であることが必要です。

例えば人文科学分野の文系の職種としては、営業・総務・経理・広報・商品開発・貿易・通訳翻訳・語学教師・デザイナーなどがあります。

また、自然科学分野の理系の 職種としては、システムエンジニア・プログラマー・機械系エンジニア・電気系エンジニアなどがあります。

職務内容が、卒業した大学や専門学校で勉強した専攻内容を活かせる内容となっていることが必要となります。

職務内容と学歴とが関連していないと、就労ビザは不許可になります。

専門学校を卒業した専門士及び高度専門士の場合は、大学卒業よりも関連性が強く求められます。

逆に言えば、大学卒業における専攻科目と、従事しようとする業務の関連性は、比較的緩やかに判断されことになります。

従って入国管理局への申請に当たっては、いかに業務内容と専攻内容が関連しているかを文書と証明資料で立証できるかが重要となります。

職務内容と専攻内容との関連性が、不明確または説明不足の場合、本来許可になるべき案件も不許可になります。

要件3.本人の学歴と職歴

就職する会社の仕事内容との関連性が審査するため、卒業証明書や成績証明書でどんな内容の科目を専攻したのか、確認する必要があります。

高卒等の人の場合は、「3年以上の実務経験、または、10年以上の実務経験」があることを立証することに重点が置かれます。

「3年以上の実務経験、または、10年以上の実務経験」について

高卒等の外国人が、文系の事務職、または理系の職種で、技術・人文知識・国際業務の資格を取得するには、10年以上の実務経験が求められます。

また、通訳、語学指導、宣伝、服飾・室内装飾デザイン、商品開発等で、技術・人文知識・国際業務の資格を取得するには、3年以上の実務経験が求められます。

実務経験は、関連する業務についてのものであれば足り、従事する業務そのものについての実務経験は必要としません。

10年以上の実務経験には、技術、知識に係る科目を専攻した期間も含められます。

実務経験の証明には過去勤めていた会社から、在職証明書等の書類をもらう必要があります。

もし前の会社と連絡ができない場合、実務経験を証明する書類が取れないことになりますので、実務経験の立証ができないことになります。

実務経験を証明する方法がないということは、この時点ですでに、就労ビザの許可は取れないことになってしまいます。

要件4.日本人と同等以上の給与水準

日本人と同等以上の給与水準であることが求められる理由は外国人に対する不当な差別を禁止するということです。

同じ会社で同じ仕事をしているのであれば、日本人社員と同じくらいの給料を支給する必要があります。

審査は、住民税の課税証明書及び納税証明書により、支給額が契約時の金額であること、および納税が漏れてないことが確認されます。

その他、申請にあたり考慮すべき内容

会社の経営状態について

就労ビザの取得には経営状態が安定してることが必要です。

そのため通常は決算書類を証明書類として提出します。

大幅な赤字決算だと、会社が潰れそうな状態であり、外国人社員に給料が払えないのではないかと審査され、許可がおりにくくなります。

しかしながらただ単に赤字だからといって就労ビザが許可されないとは言えません。

今年は赤字でも、将来は黒字化すると説明できれば許可が取れます。

そのためにはしっかりした事業計画書を作って申請書に添付することが求められます。

将来の会社の安定性をアピールすることが、赤字決算の申請では重要となります。

新設会社は実績がありませんし、決算書も作ってないと思います。

決算書を出せない場合は必ず事業計画書を作成して提出する必要があります。

会社の規模について

会社の規模が社長一人の会社でも就労ビザは取ることが可能です。

会社に安定性と継続性があればよく会社の規模で不許可を出すことはありません。

新設会社の場合でも、社長一人の会社でも事業計画書を通して、事業の安定性と継続性をアピールさえすれば外国人社員の就労ビザは取得可能です。

2期目以降の会社は決算報告書を提出し、事業の安定性と継続性が審査されます。

決算書の内容が良くない場合、これもまた事業計画書で今後の展開をアピールすることにより、十分就労ビザの許可可能性を高めることができます。

技術・人文知識・国際業務で重要なのは外国人社員の職務内容と学歴の関連性になります。

外国人本人に前科がない

前科がないということは外国人が過去警察に捕まったことがないということです。

交通違反等の反則金は罰金には含まれません。ただし、交通違反もたびたび違反を繰り返す場合は不許可の可能性が高くなります。

不良外国人にはビザは出さないで帰国してもらう、または日本への入国を禁止するというのが入国管理局の方針です。

採用理由書作成上のポイント

採用理由書とは内定を出した企業がその外国人にどういった仕事をさせるか、どうしてその外国人を必要とするのかということを明確に説明した書面です。

就労ビザの取得にあたっては理由書を明確に記載し、入国管理局に提出することが重要です。

採用理由書では、内定した外国人の職務内容について分かりやすく説明します。

採用理由書に記載した内容の信憑性を高めるため、事務所内の写真や会社案内、カタログ等は、積極的に添付した方が説得力が増します。

採用理由書だけでは入国管理局が許可判断できない場合には、申請後により詳細な説明と追加資料の提出が求められることもあります。

追加資料の提出が求められたら、真摯に対応し、できるだけ速やかに提出するよう心掛けるべきです。

派遣社員のビザ取得

派遣社員でも就労ビザは取得可能です。

派遣契約の場合に注意する点として、派遣先の会社での職務内容が技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当しているかどうかが重要です。

そして派遣元の会社との契約期間、給与額、派遣元の財務状況によって、継続性と安定性が認められるかどうかが審査のポイントとなります。

他の就労ビザとの関係について

就労ビザの活動が技術・人文知識・国際業務に関わる活動に該当する場合であっても,その活動が教授、芸術、宗教、報道、経営管理、法律会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤及び興行のいずれかに関わるが活動に該当する場合はこれらの在留資格が決定されます。

教授

外国人が契約する機関は、大学若しくはこれに準ずる機関で、研究の指導又は教育をする場合は教授の在留資格が決定されます。

契約機関がこれらの教育機関以外であった場合でも、研究を行う場所がこれらの教育機関である場合は教授の在留資格となります。

経営管理

技術・人文知識・国際業務の在留資格で在留していた外国人が昇進等により当該企業の経営者や管理者となった場合でも、直ちに経営管理の在留資格に変更する必要はなく、現に有する技術・人文知識・国際業務の在留資格の在留期限の満了に合わせて、経営管理の在留資格を申請して構いません。

医療

法律上資格を有する者が行う医療に関わる業務に従事する場合は医療の在留資格に該当します。

医療に関わる業務に従事する活動のううち、特定の資格を有しなくても行うことができる活動は、技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当します。

研究

技術・人文知識・国際業務の在留資格はその有する技術や知識を使って公私の機関の業務を遂行する活動であるのに対し、研究の在留資格はその技術等の研究をすること自体を目的とする活動である点で相違します。

教育

教育の在留資格は小学校中学校等の教育機関において、語学教育その他の教育をする活動であるのに対し、技術・人文知識・国際業務の在留資格は、教育機関以外の機関において、公私の機関との契約に基づいて、自然科学もしくは人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動が該当します。

企業内転勤

企業内転勤の在留資格は、期間を定めて転勤するものであることと、転勤した特定の事業所においてしか活動を行うことができない点で、技術・人文知識・国際業務の在留資格と相違します。

企業内転勤の在留資格は、転勤の直前にその事業所において1年以上継続して技術・人文知識・国際業務の業務に従事していることが必要ですが、一年以上継続して勤務していない場合であっても、技術・人文知識・国際業務の在留資格に適合する場合は、技術・人文知識・国際業務で入国することが可能です。

企業内転勤において必要とされる本邦の公私の機関との契約は、同一法人内での転勤であれば、転勤前に外国企業に採用された時点で当該企業との間で雇用契約等を既に結んでいるため、同一法人の外国の事業所から日本の事業所へ転勤しても、新たな雇用契約を結ぶ必要はありません。

なお、企業内転勤の「転勤」には、同一法人内(本店支店、駐在所等)の異動だけでなく、系列会社内(親会社、子会社、関連会社等)への出向等も含まれます。

また、「雇用契約」の締結については技術・人文知識・国際業務の場合も同じで、同一法人の外国事業所から日本の事業所への転勤の場合は、外国法人で既に雇用契約を結んでいれば、日本で新たな雇用契約を結ぶ必要はありません。しかし、外国の親会社社員が、日本の子会社に、技術・人文知識・国際業務で就労する場合は、子会社は別法人なので、日本の子会社との間で雇用契約を結ぶ必要があります。

興行

興行の在留資格については、コーチやトレーナー、録音、録画技術等の自然科学もしくは人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務についても、興行の在留資格に該当します。

法律会計

法律会計業務の在留資格は法務大臣の承認を受け、日本弁護士会に登録されたものであって法律に関わる業務に従事する活動が該当します。

国際仲裁事件の手続きについて本邦の公私の機関でない者との契約に基づき報酬を受けて国際仲裁代理を行うため、日本に入国する外国人弁護士は特定活動に該当します。なお外国弁護士はその外国において依頼され又は受任した国際仲裁事件の手続きについて代理を行うことができます。