問題の所在
永住者配偶者等の該当範囲
永住者配偶者等の身分及び地位に該当するには、以下のいずれかの身分を有する者である必要があります。
- 永住者等の配偶者の身分を有する者
配偶者とは現に結婚中のものをいい、相手方の配偶者が死亡又は離婚したものは含まれません。
また結婚が法的に日本国内で有効であることが必要で、たとえ外国で合法的に結婚したとしても、同性婚は配偶者には含まれません。
- 永住者等の子として日本で出生し、同居して生活していること
子として日本で出生した者とは、実子のことで、嫡出子と認知された非嫡出子も含まれますが、養子は含まれません。
具体的には、以下の場合が該当します。
①出生の時、父母いずれか一方が永住者の場合
②本人の出生前に父が死亡し、その父が死亡の日に永住者であった場合日本で出産することが必要となります。たとえ永住者の資格で在留していても、母国で出産するために、一旦日本を出国し、母国で出産した場合は、永住者の配偶者等の在留資格は許可されません。
- 特別永住者の子として日本で出生し、出生後引き続き日本に在留する者
出生後、60日以内に特別永住許可申請を行う必要がありますが、申請できなかったものも永住者の配偶者等の在留資格が付与されます。
特別永住許可を得るには、引き続き日本に在留している必要があります。
永住者配偶者等の喪失要件
日本で結婚した外国人同士が、永住者配偶者等の身分及び地位が喪失するケースとしては以下の2つがあります。
- 配偶者としての活動を6ケ月以上行わない場合
永住者の配偶者等の在留資格で在留する 外国人は、 配偶者としての活動を6ヶ月以上行わないでいることが判明した場合在、留資格の取り消しに合う可能性があります。
配偶者としての活動とは、夫婦としての共同生活の実体を欠くようようになり、その回復の見込みが全くない状態に至った場合をいいます。
法律上婚姻関係にあったとしても、同居し、互いに協力し、扶助しあって共同生活を営むという、婚姻の実体を伴ってない場合は、配偶者としての活動を行っているとは認められません。
- 配偶者と離婚又は死別した場合
永住者の配偶者等の在留資格は、外国人の配偶者と離婚・死別したとき、在留資格がなくなります。
また、永住者の配偶者等の在留資格を有する外国人配偶者は、配偶者と離婚また死別した場合、14日以内に地方入管理局への届出義務があります。
永住者配偶者等から永住権を取得する必要性
永住者配偶者等の在留資格は、外国人配偶者との婚姻関係が継続し、日本に住み続けることを前提とした在留資格です。
良好な婚姻関係が続かなくなり、離婚又は死別した場合は、永住者配偶者等の在留資格から、他の在留資格に変更しなければ、日本に住み続けることはできません。
外国人配偶者と離婚又は死別後も、安心して日本に在留することを希望する場合は、永住権を取得するのが望ましいといえます。
永住者配偶者等の在留資格からの永住権取得では、永住権取得要件のうち、素行善良要件と独立生計要件が緩和され、国益要件を満たせば、永住権が取得できます。
一般の永住権取得には、引き続き10年の在留期間と、5年以上の就労期間が必要となりますが、日本で外国人同士が結婚し、永住権を取得するには、実体を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留しているばよく、要件が緩和されています。
永住者配偶者等から永住権申請の必要書類
自分で作成・準備するもの
<共通の書類>
- 永住許可申請書
- 写真(縦4cm×横3cm)
- 理由書(永住許可を必要とする理由をかいた文書)
- 預貯金通帳の写し(申請人を扶養する者がいる場合は、その者の預貯金通帳の写しも必要)
- パスポート(申請の際に提示)
- 在留カード(申請の際に提示)
- 自宅の賃貸借契約書の写し
- 自宅の写真(外観、玄関、キッチン、リビング、寝室等)
- スナップ写真(家族と写っているものを3枚以上)
- 申請人の自宅の賃貸借契約書の写し
- 最終学歴の卒業証明書または卒業証書の写し
- 彰状、感謝状、叙勲書等の写し(あれば有利となる)
<自分または扶養者が会社経営している場合>
- 定款の写し
- 営業許可証の写し
- 法人税の確定申告書の写し 直近3期分
- 会社案内
勤めている会社から取得するもの(扶養者が会社員の場合)
- 在職証明書(直近3ヶ月以内発行のもの)
- 申請人の源泉徴収票(直近3年分)
- 申請人の給与明細書(直近3ヶ月分)
市区町村役場から取得するもの
- 申請人を含む家族全員(世帯)の住民票
マイナンバーは省略し、他の項目は省略なしのもの - 住民税の課税(又は非課税)証明書及び納税証明書(過去1年分)
- 国民健康保険税の納税証明書 過去3年分(国民健康保険加入者の場合)
- 保険証の写し(表と裏、両面)
法務局から取得するもの
- 土地の登記事項証明書(不動産所有している場合)
居住用・投資用・同居親族・申請人を扶養する者が所有する不動産も含む - 建物の登記事項証明書(不動産所有している場合)
居住用・投資用・同居親族・申請人を扶養する者が所有する不動産も含む - 法人の登記事項証明書(自分または扶養者が会社経営している場合)
身元保証人から取得するもの
- 身元保証書
- 身元保証人の印鑑(身元保証書に認印を押印)
- 身元保証人の在職証明書または法人登記事項証明書
- 身元保証人の直近(過去1年分)の課税証明書または納税証明書
- 身元保証人の住民票
申請人の母国から取得するもの
申請人の身分関係を証明する、戸籍謄本、出生証明書、結婚証明書、特別養子縁組証明書
【中国人】
結婚公証書、出生公証書、特別養子縁組公証書
【韓国人】
婚姻関係証明書、基本証明書、家族関係証明書
(注)母国からの書類は日本語訳が必要となります。
永住者配偶者からの永住権取得要件
永住者配偶者からの永住権取得では、素行善良要件と独立生計要件が緩和され、国益要件を満たせば、永住権が取得できます。
国益要件とは、その者の永住が日本国の利益に合すると認められることをいいます。これは、永住申請をする外国人が、日本の国益に合致しているかどうかということで、具体的には以下の4つの要件が必要となります。
1. 実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していること。その実子等の場合は、1年以上日本に継続して在留していること
外国人と結婚した外国人配偶者
永住者と結婚した外国人配偶者が永住権を取得するには、実体を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留している必要があります。
実体を伴った婚姻というのは、同居していることを指し、別居しているような場合は、婚姻の実体がないと判断される可能性があります。別居が単身赴任等の理由による場合には、別居に合理的理由があると判断されることもあります。
外国人配偶者の在留資格は必ずしも「永住者の配偶者等」である必要はなく、例えば技術・人文知識・国際業務等の在留資格で日本に在留している場合でも、実体を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していれば、永住権が取得可能です。
日本で生まれた永住者の実子
日本で生まれた永住者の実子が、引き続き1年以上日本に在留していれば、永住権が取得できます。結婚していない外国人との間に生まれた子は、父親の認知により実子(非嫡出子)として扱われます。
日本で出産していることが必要であり、永住者の実子であっても、母が母国に帰り出産した場合は、生まれた子が日本で永住権を取得するには、一般永住と同様、引き続き10年の在留期間と、5年以上の就労期間が必要となります
2. 納税義務や公的義務を履行していること
納付義務履行の証明
これは、所得税、住民税、国民健康保険税、国民年金等をきちんと払ってるかどうかということです。会社員の場合給与から源泉されるので問題ないですが、自分で納付している場合は、きちんと納付期限を守って支払っているかが問題となります。 自分で納付している場合は、納付期限を守って支払っていることを証明するために、領収書をきちんと保管しておく必要があります。銀行口座から自動引き落としを利用している場合は、通帳の記帳を忘れず行うことが必要となります。もし記帳忘れ合計記帳でまとめられて記帳された場合は、銀行から明細を取得する必要があります。
税金等の納付漏れや、期限後納付があった場合
納付期限を守って支払っていない場合は、永住申請をする直近1年間、納付期限を守って支払っている実績を作ってから申請となります。 理由書には、納付期限を守って納付できなかった理由と反省、口座自動引き落としにした等の対策を示すことが必要となります。
国民健康保険は払っているが、国民年金を払っていないような場合は、国民年金に加入する必要があります。そして納付期限を守った支払い実績を一年分作ってから申請することになります。
永住申請では、例えさかのぼって払ったとしても、納付期限を守らなかったことの事実は変えられませんので、むしろ将来1年間にわたってきちんと納付した実績を作ってから、理由書で未加入であった理由、反省、きちんと納付した実績を示して永住申請すれば、許可される可能性が高くなります。
永住者の配偶者が無収入の場合
永住者の配偶者等の在留資格を有している人は、無収入または扶養の範囲内での収入にとどまり、永住者側の扶養に入ってる人も多いと思われます。
そのため、外国人配偶者個人として各種納税関係の義務を履行していることの要件を満たさない場合もあります。その場合には永住者側で、その要件を満たす必要があります。
会社経営者の場合
会社経営者の場合は、経営形態に合わせて各種保険加入義務の履行と、納付期限内の支払い履行をしていれば国益要件を満たすことになります。
もし各種保険加入義務違反や納付期限内に支払いをしていない場合は実績を1年以上貯めてから申請することで許可される可能性が出ます。
3. 現に有している在留資格について最長の在留期間で在留していること
法律上は5年が最長の在留期間ですが、3年で許可されている場合は最長の在留期間として取り扱われています。
4. 公衆衛生上、有害となるおそれがないこと
これは、麻薬、大麻、覚せい剤等の中毒患者でないこと、エボラ出血熱、結核、SARS,鳥インフルエンザ等の感染症患者でないことを意味します。
公衆衛生上有害でないことの証明としては、健康診断書を添付します。
まとめ
永住権の取得要件が緩和されている永住者の配偶者等から、永住権を取得しておくことのメリットは大きいです。
不幸にも、配偶者たる身分が将来破綻した場合、離婚または死別後も日本に居住し続けたいなら、永住者の配偶者等の在留資格のうちに永住権を取っておきましょう。
ここでは、永住権を永住者の配偶者等の在留資格から取得することの必要性と、提出書類、永住許可申請の要件についてまとめました。